HSPを正しく知るには『HSPの心理学』本がおすすめ

心理学・カウンセリング

HSPに関心のある方が、HSPのことを正しく知って日常生活や仕事に生かすには

『HSPの心理学』飯村周平(金子書房)がおすすめです。

HSPあるある(よくある誤解)

繊細さん本などをきっかけに、HSPという概念を知り
自分の生きづらさの理由が分かったと、ほっとした方もいらっしゃると思います。

HSPとは、Highly Sensitive Personの略語で
「環境感受性」という特性が、とても高い人のことを指す言葉です。

ただ、山のように出版されているHSP本を読むと

「HSPの人は繊細で生きづらいけれど、特別な才能を持っている」というように
本来のHSPの考え方とは、かけ離れた記述も多いようです。

それに対し

この本の中で、著者の飯村先生は
「HSPあるある」として、多くの誤った情報をバッサバッサと否定されていました。

たとえば

・ よくある「HSPチェックリスト」
→専門家から見ると何を測定しているのか分からないし、根拠もない

・ HSPは能力である
→違う。能力ならトレーニング次第で鈍感になれるはずだが、それは無理

・ 5人に1人がHSPである
→違う。そもそも、HSP(感受性高い)か非HSP(感受性低い)かの2択ではない

・ HSPは遺伝率が高い
→違う。遺伝率は他の性格特性と同程度

など。

研究にもとづいたHSPの正しい考え方

HSPとは、環境感受性が高い人のことをいいますが

これは、ポジティブ・ネガティブ両方の面において
「環境からの影響を受けやすい人」という意味です。

あくまで「気質や性格の特性」であり、「能力や才能(ギフト)」ではありません。

HSP度を測るには、Aron&Aron(1997)によるHSP尺度27項目がありますが

そのうち8項目は、日本人の感受性を十分に反映しないことが統計的に示唆されていて
残る19項目で、Highly Sensitive Person Scale 日本版(HSPS-J19)が作られています。

高橋亜希.(2016). Highly Sensitive Person Scale日本版(HSPS-J19)の作成.
感情心理学研究, 23, 68-77.

さらに、この尺度を使って分かるのは
感受性の高低のグラデーション上、自分が「相対的に」どこに位置するか、です。

HSPか非HSPかを、診断する目的では使いません(診断できません)。

感受性の高低に何が影響するかや、他の性格特性(ビックファイブ)との関連など
さらにご興味のある方は、上記の本や論文をどうぞ。

知見をHSPの生存戦略に生かそう

HSPがここまでのブームになったのは
それだけ「生きづらい」と感じる人が多かったからだと思います。

つらさに名前がつくことで、前向きに受け入れられるので。

私は子どものころから、とにかく音とにおいに敏感で、今でもそれは変わりません。
AirPodsと耳栓は必須で、他人のタバコも香水も体臭も、タンスにしまっていた服の臭いもNGです。

日本版のHSP尺度は、飯村先生がさらに短縮版の10項目を作られていますが
平均値と標準偏差から判断し、私はその上位15%以内に入ります。

ただ、この尺度に限らず、他の心理尺度も
測定結果はあくまで「自己申告」にすぎません。

なので、自分がそれっぽいかもと回答すれば、そういう結果になり
私はいつも割り引いてみています。

とはいえ、HSP傾向であること自体は、良いも悪いもなくニュートラルですから
自分は環境の影響を受けやすいタイプ=生かすも殺すも「環境次第」だと自覚すれば

ストレスフルな場所から離れ、ポジティブでいられる環境を作りだせれば
感受性の低い人より実力を発揮しやすい

と、ある意味割り切って考えています。

飯村先生のご本には、ストレスやコーピング、レジリエンスなど
専門家目線での、環境改善のヒントも書かれています。

ご自身や身近な人がHSP傾向そうでしたら、お手に取ってみて下さい。

※音とにおいに敏感なはず…

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