M-GTA研究会で発表してから1か月。
ようやく立ち直り、研究を再開したので、研究会での指摘事項をまとめてみました。
※出典:M-GTA研究会
発表当日まで
発表者に採用されてから知ったこと、
それは、発表会は自分の分析を披露しアドバイス頂く場ではなく
当日までSVの先生にみっちりご指導頂き
自分の分析をどこまで適切な形に近づけられたかを披露する場(!)
だったということです。
そこで採用後、SVの先生に
修論時の結果図、ストーリーライン、分析ワークシートをお送りしたところ
「これは概念生成からやり直しだね」と言われ
※完成したレンガの家を、レンガの材料から作り直すイメージ
それから当日までの2週間
必死で一から分析ワークシート作り(レンガ作り)をし
随時SVの先生にもシートをお見せし、ダメ出しして頂きました。
私の当初分析の問題点
という状況だったので、SVの先生には非常に申し訳なかったけれど
(本来はもっと次元の高いご指導をして下さる場のはず)
私にとっては、ありえないほど贅沢な状況でした。
大学院は、もちろんゼミでも
M-GTAの分析過程をひとつひとつ、手取り足取りで教えてもらえたりはしませんので。
その結果、私の分析にはこんな問題点があると指摘されました。
・概念間に動きがない
・概念名が難しく、専門外の人に分かりにくい
・バリエーションが定義に合っていない
・概念の抽象度を上げきれていない。つまり分析しきっていない
・生成型思考ではなく分類型思考になっている
だから「プロセス」の矢印しか表せず、「変化」や「影響」の矢印が図に見られない
・KJ法とは違うM-GTAならではのプロセスが見えない
・自分の思考の言語化が足りない
など。
一番の問題点は、分類型思考だったことです。
逐語からバリエーションを抜き出す際、
定義を熟考せず、概念名も仮置きのままで
さらに自分の思考の過程を、きちんと理論的メモ欄に残すことをせず
似ている語り探しで分析を進めた結果
概念数が増え、
見比べて数を減らした概念をカテゴリーに分類しただけの図になっていました。
本来は、定義あってのバリエーションなので、まずは定義が最重要。
その上で、バリエーションを追加する都度、定義と概念名を見直し
そういった思考の過程をもれなくメモし
概念同士の意味のつながりを見つけ、積み上げでカテゴリーを作り結果図とすべきでした。
レンガ作りがまずかったから、期限までに家が建て終わらなかったことを、再認識。
先生は
「M-GTAで分析したという査読論文だって、8割がたちゃんと分析できてないから大丈夫」と
(分かったような分からないような)心優しい慰め方をして下さいましたが。
発表当日を経て
結局、分析途中で発表当日を迎えたので、かなり不十分な質疑応答だったと思います。
さらに、私の後に発表したこまちゃんが(大学院同期で、たまたま青学も同年卒)素晴らしく
さすがに能力不足すぎる自分が悲しくて
研究なんてもうここでやめてしまおうかと、真剣に悩みました。
でも当日に世話人の先生方から頂いた
・「相続」のプロセスは「死」によるものとはもっと違うのではないか。相続というあくまで法的な、物的なものが絡んだ上での心理的葛藤に限定しないと、分析テーマにそぐわないのでは
・常に「父の相続を通じた」という分析テーマに照らし合わせバリエーションを判断していかないと、死別の悲嘆をどう乗り越えるのかというプロセスとの違いが出ないのでは
という的確なご指摘をもとに、研究を振り返り
分析方法だけじゃなく、分析テーマの絞り込みも甘い(広すぎた)ことに気づき
ようやく心の傷も癒えた今週から、再び研究に取り組み始めました。
木下先生のコメント
それに当日は、木下康仁先生からも直接コメントを頂けたんですよね。総括という形でですが。
私の体験記はともかく
木下先生の生アドバイスは、今後分析される方のヒントになると思うので、ポイントをご紹介します。
・分析テーマをしっかり定めること。この問いさえ定まれば、どれだけ難易度の高い作業であっても必ず進んでいける
・量的研究は数字であることによって抽象化されているけれど、インタビューデータは生の語り。だから、抽象化が必要
・結果の完成度は複雑さではない。実践に活用しやすいモデルという視点を忘れないこと
・研究対象とした専門領域のことを実務を通じて分かっている研究の場合(今回の私とこまちゃん)、分析時にはデータとの距離を調整・制御し、近すぎないようにすること。そのためにM-GTAの手法を使う意味がある
・予想できない何か新しいことが分からないなら、こんなに膨大な時間をかけた研究をする意味はない。自分でも予想しないような何かがデータを丁寧に分析していくことによって気づけるかどうか、これが研究の勝負所
深い、深いです。
木下先生のご本をどう使うか
ちなみに、木下先生のご本は多くあり
それらに一通り目を通した後、初学者がどう活用しながら分析を進めるかは、悩ましいところです。
今なら『定本 M-GTA』がベースになりますが
私はSVの先生から
『ライブ講義M-GTA』の第2部を再読し、木下先生の思考回路を理解するように言われました。
木下先生が、分析ワークシートを一から立ち上げ、分析を始めるところから
事例をもとに解説して下さっていますので
これを正しく理解できれば私のように
間違ったレンガ作りで家を建てることにはならないはずです。
私は、『グラウンデッド・セオリー・アプローチの実践』もメインに使っていましたが
SVの先生からは
より具体的に書かれている前述の2冊を分析のお供にすることを薦められました。
私のように門外漢&初学者で、分析される方のご参考になれば幸いです。
おわりに
以上、M-GTA研究会でのSVやご指摘頂いた事項をまとめました。
京セラの稲盛名誉会長がお亡くなりになりました。
動機善なりや、私心なかりしか。
DDIのエレベーターでご一緒したことがあります。
ご冥福を心からお祈りします。