おすすめ本『心はどこへ消えた?』東畑開人さん著

心理学・カウンセリング

東畑開人さんの『心はどこへ消えた?』を読みました。

週刊文春への連載がまとめられた本なので、
心理学に興味のない方でも、ゆるく楽しみながら読め、おすすめです。

好きな理由は、大事にしたいことが似ているから

前作『居るのはつらいよ』を読み、この方のご本が好きになりました。

東畑さんは、京大大学院博士号の臨床心理士という超ハイスペックな方。

ただこの本は、いわゆる研究者が書いた堅い本ではありません。

くすっと笑える内容と、あたたかい文章が好きですし
大事にしたいこと、優先したいことが似ている気がします(おこがましいですが)。

個人の小さな問題だって大事

ざっくり言えば
大きな問題だけが重要なわけじゃない。

小さな問題だって大事。
だから誰もが、生きていく中で生じた傷のつらさを、口に出し助けを求めていい。

まあこれは、カウンセラーに共通する考え方ですが(多分)。

特に今は、世界共通の大問題=コロナがあるから余計に
個人の小さな不安や悩みが、より軽く扱われている気がします。

「子どものピアノの発表会なんてどうでもいい」と言う方がいたり、とか。

世の中の大問題の方が、むしろどうでもいいと思う

振り返れば、税理士の飯のタネは法律や税金で
自分の権利義務やお金の損得という、誰にとっても大問題だからこそ、ご依頼を頂くわけですが。

でも、言ってしまえばこれも「単なる決まり」。
必ずしも、最優先すべきことではないし、その決まりが正しいとか正義だとかいうことは全然なく。

自分の人生や平穏な家族関係の方が、断然大事です。

本の中にも「金で済むことは、楽やなあ」というくだりがありました。

世の中には、お金で解決できる不幸も多いが、お金では済まないことも多すぎる。
だから、金で済むことは楽だと。

相続だって、リストラだって、いじめだって
単にお金の多寡で解決できるなら、どれだけ話がシンプルで早いか。

ドライアイスが溶けるには、水がいる

東畑さんは本の中で

「カチコチのドライアイスを溶かすには、水が必要。
水にひたせば、あぶくがぷくぷく出る。
水が他者で、あぶくが言葉。
心の中で固まった言葉は、他者と交わることで形になる。」

とおっしゃっていました。

ドライアイスが相手の凍った心なら
その心に心で向き合い、ただ居れば、あぶくが出てきて、ドライアイスは「自力で」溶けていきます。

まとめ

おすすめ本『心はどこへ消えた?』東畑開人さん著について、感じたことを書きました。

この本は、実際のカウンセリング事例をベースに、語られている部分が多いのですが

リストラと離婚で、チックになった中年男性
裕福で社会的立場もあるのに、万引き常習犯の男性
授業中に粗相をしてしまい、不登校になった中学生
母親を病気で亡くした4歳の子
過労で休職した30代男性(ホイミを知って復活)
不登校の娘を持つ母親
名門高校を中退し、リストカットをやめられない女の子
裕福だけど、不眠の老婦人
まじめすぎてクラスになじめない小学生の男の子
うつ気味の40代ベンチャー企業経営者
妻の不倫を知った40代男性・・・など、まだまだ続き。

心の問題は、経済や社会の問題と比べ、軽視されがちです。

でもどんなに個人的で小さな問題だって
誰でも・いつでも抱える可能性のある、大問題だと思うのです。

「ウヒウヒグマのズババババー(トゥーンブラストというゲームにはまる)話」とか
「禁煙できない話」とか、一見どーでもよさそうな話も本には出てきますが。

実はゲームや薬物への依存症は、とても重要なテーマです。
(そのテーマで論文を執筆している同期もいます)。

だから面白おかしく、誰にでもある心の弱さを、あえて語ってくれているのかなあ、と。

よろしければ、ぜひ。

※心理学辞典には、「心」という語が載ってないと書かれていたので
思わず調べてしまいました。ホントだ!びっくり・・・

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