やっぱり自分が「お客さま」にならないと分からない

生きる

税務雑誌の相続特集の取材を受けました。私の担当は、「まず何から勉強したらいい?」「どうやったら相続業務の依頼がくる?」「仕事やお客様は選ぶべき?」といった、相続税のイロハのイの部分です。

その際、「通常の税理士業務と、相続業務の違いは何でしょう?」という質問に「お客様が一般の人である(=ビジネスマンではない)こと」と答えたのですが・・・今思えば、そんな私がダメなビジネスマンの典型例。税理士的には事実であっても、やはり「先生」側の立場でしか物事を見ていないのだと、反省しました。

写真

ビジネス上の暗黙の了解が通じるか、通じないか

通常の税理士業務では、会社の社長や経理の方、または個人事業主がお客様なので、ある程度、ビジネス上の暗黙の了解みたいなものが通じます。たとえば

・ 連絡手段、その時間や頻度など ・・・電話や訪問、メール対応などにつき、内容に応じた連絡手段を選ぶ、ビジネスアワーとそれ以外を考慮する、など
・ 重要度・緊急度に応じた対応 ・・・重要度や緊急度に応じお互いに急がせない、厳密さを求めすぎないこともある
・ 当初の見積金額は変わる ・・・想定外のトラブルは生じうる

などですが、相続のお客様にはこれが通じないことがありました。
なので、相続案件は経営者に限らず、サラリーマンでも公務員でも主婦でも、誰にでも生じる問題なので意外に間口は広いというメリットはあるけれど、だからこそそれが相続業務を受任した後のデメリットになると、取材では説明したかったのです。

自分が「お客さま」になってみると

でも最近、家庭の事情で、自分が顧客として様々な専門家にお願いごとをする機会があったのですが

・ 不安は早くプロに確認して解決したい (メールしちゃえ!)
・ やっぱり自分の事案が一番大切 (少しでも早くやってしてほしい!!)
・ 最初に提示された金額に、これも追加料金あれも追加料金と言われると(いったいいくらになるか怖い)

となって、「あなた『相続のお客様はね~』なんて言ってたけれど、それって全部お客様の立場になれば当たり前のことじゃない」と自分自身で思った次第です。

「お客様第一主義」「お客様志向」といったスローガンを掲げる会社は多いけれど、やっぱり私は自分が「お客さま」にならないと分からないな~と実感する、いい機会になりました。

改めて、相続事案で私が気をつけていること2つ

1. 手間と難易度、完成した申告書の違いを理解してもらった上で、適正な報酬を得るのは難しい。他の税理士との比較も、間違いがあっても税務署から指摘されるのはずっと後なので、分かりにくい。
だからこそ、形のあるものではなく、トータルでの対応力を売っているということを忘れない。

2. 税務調査で追徴課税されるリスクは、普通の人には理解できない。プロに高額な報酬を払って頼んだのに、とクレームになりやすい。だからこそ、事前の十分な説明が必要。

-生きる

関連記事

税理士のための百箇条

今日は、弁護士関根稔先生の研修『税理士のための百箇条』に参加しました。 具体的な税法の研修ではなく、有料なのにも関わらず、さすがに!満員御礼でした。   税理士のための百箇条―実務と判断の指 …

みんな死にたくない。それは高齢者でも同じだと忘れないでいたい

事故や病気で10代や20代の人が亡くなった。 そう聞くとかわいそうだと心が痛みます。 でも、80代や90代の方の死に対しても鈍感にならないでいたいです。 目次1 コロナが怖い理由は「死」2 仕事ではい …

76万4000部。これも小さな一歩の積み重ね

  今や「身近な人が~」と画像検索でググると、類書がたくさんありますが 『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』が3000部増刷されることになり 累計で76万4000部となりました。 発売か …

「おたがいさま」だと思える関係

目次1 リノベ前のご近所挨拶2 「おたがいさまですから」と言われて3 誰になら「おたがいさま」と思えるか リノベ前のご近所挨拶 フルリノベの騒音は「すさまじい(ので苦情が来るかも)」と聞いていたので …

適度に恐れ、過度に恐れない

目次1 女性の自己評価は常に2割引き2 「私は自信があります」3 言い切るだけで、相手に安心感を与えられるなら4 ひとりごと 女性の自己評価は常に2割引き 日経電子版で「思い上がれない女性たち」という …