複数の相続人の方が集まる席に、税理士が同席する機会は多くあります。
相続税申告のみのお客さまでも
顔合わせ、途中経過のご報告、遺産分割協議、申告内容・納税額のご説明など。
私は、基本的に「〇〇さま」「〇〇さん」と下の名前でお呼びし
「名字」「肩書」「続柄」では呼ばないよう、気をつけています。
その理由についてまとめました。
※秀俊さま、将生さま
名字で呼ばない理由
「佐藤さま」「田中さま」のように、名字で呼ばないようにしています。
佐藤家の相続だから、同じ名字の方が複数いて混乱する、というより
「亡くなった方と同じ名字=相続上の様々な権利が優先される」という先入観を
相続人の方々に、持ちにくくして頂くためです。
寄与分などのもっともな理由があれば別ですが、単に名字が同じというだけで
「嫁に行ったのだから」(主張するな)
「もう佐藤の家の人間でもないのに」(口を出すな)
という方向に話が進みそうなケースでは、特に気をつけます。
結婚すると、女性が姓を変えることが大半ですが
近頃は、娘がおもに親のケア役割をしていることも多いので。
肩書で呼ばない理由
「社長」「専務」のように、肩書で呼ばないようにしています。
社長との1対1の打ち合わせや
経理担当者を交えて会うときは、もちろん「●●社長」と呼びますが
他の相続人の方と一緒に会うときに、肩書はつけません。
顧問先などの相続事案は、後継者である子がメインの相続人になり
税理士的には、既にお客様や資産内容の一部を知っているので、心理的には楽です。
ただそのことが
他のご兄弟から、税理士が中立ではない(=信用できない)と受け取られないよう
全員を「●●さま」と同じように呼んでいます。
続柄で呼ばない理由
「お父さま」「ご主人」「お母さま」「奥さま」「ご長男」「ご長女」のように
続柄で呼ばないようにしています。
名字で呼ばない理由と似ていますが、
みなさんが過去に家庭内で背負っていた役割を、相続の場面でさらに刷り込みたくないからです。
「妻だから・母だから・長男だから・お姉ちゃんだから・末っ子だから~すべき」のように
その役目が、長年のとらわれになっていることもあります。
とはいえ逆に、あえて続柄で呼ぶことも。
たとえば、声の大きい方の意見に押され、他の方が自分の疑問や考えを口に出せないときは
「お母さまは、どう思われますか」
「お姉さまは、何かご質問はありませんか」
と、目上の方の本来の立場感をその場に出し、公平に発言してもらえるよう心がけることもあります。
まとめ
以上、相続人の方を名字・肩書・続柄で呼ばない理由を書きました。
相続業務に関わる士業は、場づくりというか、場の下支えをする役割もありますね。
映画『ドライブ・マイ・カー』を観ました。
来月DVDが届くらしいので(夫購入)、再度じっくり「正しく傷つく」ことについて考えてみます。