週刊T&Amaster NO.750(2018年8月6日号)
相続財産の仮想隠ぺいをめぐる最近の取消裁決事例
審判所、課税当局による重加算税を相次いで取り消す
目次
相続開始直前の預金口座からの引出しが問題に
記事では、相続財産の申告もれに対し、税務署から重加算税を課されたものの
それが国税不服審判所で取り消された事例が、いくつか紹介されていました。
そのうち、平成30年3月29日裁決は
亡くなる11日前、被相続人が倒れて意識不明になり
その翌日と翌々日に、相続人が被相続人の口座から1,000万円を出金し、自分の口座へ入金し
この1,000万円を、遺産分割協議書や相続税の申告書に記載しなかった
というもの。
意識不明に陥った人が
10日間で1,000万円を使い切ったり、誰かに贈与したりはしないでしょうから
1,000万円は死亡日に存在し、遺産分割や相続税の対象になると考えるのが自然です。
重加算税・仮装隠ぺい行為とは
重加算税
「重加算税」とは、適正な申告が行われなかった場合の制裁金のひとつです。
その分、本来納める税金が割増されます。
単なるミスなら、過少申告加算税10%で済みますが
仮装隠ぺい行為があったと認定されると、代わりに重加算税35%が課されます。
利息に相当する「延滞税」も合わせると、税金が5割増し近くになってしまいます。
仮装隠ぺい行為
相続税では、当初から相続財産を過少に申告することを意図し
その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたと推認できる事実がある場合
「仮装隠ぺい行為」があったと認定されます。
つまり、申告もれの行為が故意だったかがポイントになりますが
それは税務署が立証しなければなりません。
【国税庁HP】相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
税務署は、相続人の
・税理士に被相続人名義の口座の「預金通帳」を提示せず、「残高証明書」を渡しただけ
・預金引出しの事実も伝えていない
という行為が、仮装隠ぺいにあたると主張していたようです。
税理士の説明不足 だから重加算税は取り消し
しかし国税不服審判所は、仮装隠ぺい行為があったとはいえないとして、重加算税を取り消しました。
その理由は「税理士が相続人に、通帳の提示や入出金に関する説明を求めていなかったから」
(くれと言われなかったんだから仕方ないね、と)
同じような理由で重加算税が取り消されたケースは、以前にもあります。
例えば、平成24年4月24日裁決でも、取り消しの理由として
「請求人(納税者)は、関与税理士から相続人名義に係る残高証明書等の資料の
提出依頼を受けておらず…」とあります。
税理士の説明不足が、不幸中の幸いになっているのは、何とも複雑な気が。
ということは、税理士からこれらの考え方を説明されたのに
納税者が税理士に資料を提示しなかったら、「仮想隠ぺい行為」になる可能性が高いことになります。
疑問点や不明点は、申告を依頼した税理士にきちんと確認しておきましょう。
相続税のかかる財産の範囲
ある財産が相続税の対象になるかは
「被相続人の名義だったか?」ではなく「実質的に被相続人のものだったか?」で判断します。
そのため、家計の実態を確認するため、税理士はこの考え方を相続人に説明し
・ 家族名義の口座の通帳
の両方を、通常は提示頂きます。
直前引出は、葬式費用などの支払いに備えて、というケースが多く、
既に現金は手元にないため、それが相続税の対象になるとは思っていなかっただけ、という方も多いです。
実際には、直前に引き出した現金はいったん相続財産に含め
別途「葬式費用」として、実額を控除する形をとります。
ひとりごと
一昨日の日経新聞朝刊に、広告を掲載して頂きました。ありがとうございます。
今日から8/22(水)まで夏休みを頂きます。
昨夜は久しぶりに「アマデウス」のDVDを視聴。