知人である井ノ上陽一さんが編集した『十人十色の「ひとり税理士」という生き方』を読みました。
10人のひとり税理士が、仕事や人生について率直に語っています。
その中のおひとり、綾野真紀さんの文を読みながら
「ああ、ひとり女性税理士の中にも私と同じことを考えてた人がいた」と少しほっとしました。
なんで自分は1足のわらじすら満足に履けないんだろう
綾野さんは、こう書かれていました。
「1足のわらじすら履きかねて」
女性税理士というと、ママであり妻であり、3足のわらじをはいてキラキラ輝いている方がクローズアップされていて、それがまたコンプレックスでした。
かたや1足のわらじすら履きかねていた私。
それでも自分の心の成長とともに何とか1足だけでも履くことができてよかったです。
ある程度の年齢になると女性には、「母」「妻」「仕事」の3つの役割が求められ
それに「正面から」向き合おうとすると、とても苦しくなります。
約10年前、私は1足のわらじすら満足に履けていない状態でした。
税理士としては10年弱のキャリアがあったものの、母でも妻でもなく、仕事だけ。
それなのに、その仕事すら自分の求める理想とはほど遠いという現実。
昭和48年生まれは最も人口の多い世代です。
就職活動のときも氷河期で、20代から30代にかけては、とにかく一人前に働けるようになろうと、必死でした。
日曜の夕暮れに街を歩いていて、ふと
「なんで世の中の人が普通にできていることが、自分にはできないんだろう」
「こんな不十分な仕事しかできない税理士のままだったら、私、どうなっちゃうんだろう」
と、ひとり涙がこぼれた記憶があります。
いっそ男性だったら、いろいろ悩まず仕事だけでき、楽だったのかもしれない、と。
(近ごろは男性も3つの役割を求められ、大変なのかもしれませんが)
そして、タクトコンサルティングを辞め、野村證券に入り、そして辞めることになりました。
税理士の資格とキャリアがあっても、開業し顧問先がなければ無職と同じです。
3足目は履けなかった。でも
でも、2足目、3足目のわらじを履けず、1足目のわらじをしつこく履きけていたら
徐々に税理士として歩ける道が見え始め
そして幸運にも夫と出会い、2足目のわらじを履きました。
(夫いわく、私が「とても寂しげで、どこか頼りなさそうで不安げにしていたから、引っ張り出したい」と思ったとのこと。
新手の口説き文句だったのか、また、今もそう思ってくれているかは微妙ですが)
不妊治療を経て、3足目のわらじを完全に諦めたのは数年前。
子どもは大好きだし、夫と自分の子ならぜひ欲しかったけれど、こればっかりは相手とタイミングのある話です。
着物姿でお客様のパーティーに出ながら、ホテルのトイレで治療のための注射を自分で打ち
あと2、3年早かったら…と悔やみました。
でも、この私が3足も履いたら、性格的にノイローゼになっちゃうかも、
きっと2足くらいが一番幸せだろうと神様が考えて、3足目は履かせなかったのだと、今は思えます。
3足のわらじを完璧に履きこなしている人なんていない
そんな日々を経て、今年の4月にホームページをリニューアルし、その旨をFacebookに投稿したところ
「プロフィールすごすぎですw」
「しかし先生、プロフィールすごい。。ため息」
というコメントをもらい、(お世辞部分を割り引いても)驚きました。
ホームページ=営業ツールですから、実績を事実としてそのまま載せただけなのに
声をかけられるまま、必死にこなしてきた仕事の数々を並べると
「私、人からは2足のわらじを華麗に履きこなしている人に見えるのか!」と。
ボロボロのわらじなのに・・・
そう考えると「母」「妻」「仕事」の3足を完璧に履きこなしているスーパーウーマンなんて
この世にはいないのかもしれません。
3足履いていても「ママとして・妻として・仕事が、まだまだ不十分」と悩み、
それでも周囲のサポートを得ながら、なんとか履いている状態とか。
3つすべてが揃っていることを称賛する風潮には、政策的な意図があります。
以前はそれが専業主婦でした。
女性の管理職を増やしたい(増やさなければならない)上場企業の社長のお客様から
「結婚してて仕事のできる女性は結構いるけど、プラス母親っていうのがハードル高い」と言われ、うーん、なんだそりゃと思ったこともあります。
とにかく前述の綾野真紀さん同様、私も、ばりキャリ・ゆるキャリといった型にはまらず、自然に歩ける職業を選んでよかったと思っているひとりです。
ご興味のある方はぜひ。
ひとりごと
長年の悪い習慣か、いまだにオンとオフのバランスを上手くとるのが苦手で
休むと訳もなく不安になり、週末もつい事務所に足が向きがちです。
それを意識的に断ち切るため、金曜には工夫をいろいろ。
花を買って、出窓に飾ったり(シャクヤクは、在宅して楽しまないとすぐ散っちゃう)
CDを買って帰ったり(リビングに座って、ちゃんと聴くため)
先週末は、南高梅を買って帰り、梅酒を漬けました。
「夕ごはん、早く作らなきゃ!」と焦らなくていい休日のキッチンは、居心地がよくてほっとします。