相続した預金の仮払い制度、金融機関ごとの上限額は150万円に

相続・遺言・遺産分割

週刊税のしるべ 平成30年10月8日

金融機関ごとの上限額は150万円
相続法改正で省令案 葬儀費等で仮払い

民法相続編が改正され、「相続した預金の仮払い制度」が新設されました。

遺産分割がまとまる前でも、各相続人はそれぞれ単独で
亡くなった方の預金を一定額まで引き出せるようになります。

これにつき、金融機関ごとの上限額を150万円にするという案が先週公表されました。

制度の概要

遺言がない限り、亡くなった方の預金は相続人「全員」のものです。

そのため、相続人が複数いる場合、遺産分割協議前は
各相続人が単独で引き出せないというのが、従来の取り扱いでした。

しかし、葬式費用や未払入院費、そして故人に養われていた人の生活費などは
死後すぐに必要となります。

そういった事情を考慮し、今後は以下の算式で計算した金額まで
相続人は他の相続人の同意がなくても、単独で預金を引き出せるようになります。

算式

単独で引き出せる額 = 相続開始時の預金の額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分

預金を引き出した場合は、相続人がその金額分の遺産を取得したとみなします。

計算例

この金額は「個々の預金債権ごと」に判断します。

たとえば、母が亡くなり、相続人が長男・長女の2人で
母が、A銀行に普通預金360万円と定期預金600万円を残していた場合

普通預金 360万円 × 3分の1 × 法定相続分2分の1=60万円
定期預金 600万円 × 3分の1 × 法定相続分2分の1=100万円

が、長男と長女が単独で引き出せる金額になります。

個々の預金債権ごとなので、A銀行の普通預金から160万円をまとめて引き出すことはできません。

金融機関ごとの上限額

ただし、この算式で計算した金額までなら、自由に引き出せるわけではありません。

改正の趣旨は「残された人が、死後、当面必要なお金に困らないように」ですから
遺産に多額の預金があるからといって、この制度で多額の引き出しを認める必要はないからです。

遅かれ早かれ、相続人間の遺産分割協議がまとまれば相続できるのですから。

そのため、改正法では「金融機関ごとの上限額」を、省令で定めることになっており
その上限額を150万円とすることが、先週明らかになりました。

上記の例の場合
長男と長女はそれぞれA銀行から、150万円までしか引き出せないことになります。

※ 上限額150万円は、まだ案ですが
10/27までの意見募集期間に異論が多く寄せられなければ、このまま確定します。
→確定しました(平成30年11月21日追記)

施行時期

新制度は、来年2019年7月1日以後の払い戻しからスタートします。

なので、相続開始日(死亡日)が2019年7月1日より前でも、払い戻しOKです。

ひとりごと

新しい分野の勉強を始めました。

50歳までの5年計画でと思っていますが、挫折せずに続けられるかが課題です。
腰痛に老眼…学びなおしの最大の敵は「加齢」ですね。

でも、日々に流されつつ北極星を見失わないでいられるのは、逆算手帳のおかげ。

昨夜、ダイヤモンド社で行われたコボリジュンコさんのセミナーに参加しながら
自分の逆算手帳のLife Visionを眺めて、しみじみそう実感しました。

-相続・遺言・遺産分割
-

関連記事

マンションの敷地にも「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できます

週刊税務通信 NO.3485(平成29年12月4日) 「地積規模の大きな宅地の評価」 マンション1室も適用可 マンション敷地全体で地積要件を判定 中低層マンションでの適用が見込まれる模様 目次1 「広 …

未分割での相続税申告、死亡保険金や相続放棄があったらどうする?

目次1 遺産分割協議がまとまらなくても、申告期限はやってくる2 死亡保険金などがある場合2.1 500万円×法定相続人の数の非課税枠は?2.2 未分割申告の計算例3 相続放棄をした人がいる場合3.1 …

マイホーム購入資金を援助してもらうなら、贈与と借入どちらが得?

今朝の日経新聞に 「住宅資金贈与の優遇拡大、国交省、非課税3,000万円枠」 という記事がありました。 両親や祖父母からマイホームの購入資金を贈与してもらうなら、 今年中なら、省エネ住宅は1,000万 …

非上場株式の評価方法が変わりました

非上場会社の株式の評価方法である、類似業種比準方式が見直されました。 上場していないすべての会社に影響のある大きな改正で 先週、国税庁HPに新通達と解説が掲載されています。 財産評価基本通達の一部改正 …

国税庁HPに「小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を適用した相続税申告書の記載例」の掲載あり

国税庁のHPには 小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を適用した相続税申告書の記載例が 掲載されています。 父が死亡、母と子2人の計3人が父の遺産を相続し 小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減の適用を …