「遺産は妻にぜんぶ」が大抵正しい

相続・遺言・遺産分割

夫の古くからの知人と食事をしました。彼女は備前焼の作家さんです。

この夏に渡米し、その後はずっと、お子さんの暮らすアメリカに住むとのこと。

長年暮らした自宅と愛着のある窯を、先日、人に譲ったばかりだそうで
「もう70代だし、ちゃんと終活してから行かないと」と言っていた笑顔が印象的でした。

自分で考え、決め、語ることが「終活」

自分の人生の最後を、自分でじっくり考えて決め
それを語っていたからか、
私にはとても晴れやかな笑顔に見えました。

考えるのは面倒だし、決めるには痛みが伴うし
「とりあえずこのまま」「じっくり考えてから後で」となりがちです。

でも、体も心も元気なうちでないと、自分の気持ちに正直には決断できません。

「生き死に」自体は、自分ではどうしようもないことだからこそ、せめて

・ 自分の頭で考えられること
・ 自分の意思で決められること
・ 自分の言葉で語れること

については、自分でひとつひとつ進めることが、「終活」なのではと思います。

「終活」という言葉には違和感があり、私はあまり使いませんが…
人生は生きるもので、終えるための活動なんていらないと思っているので

子どもの意見はどう反映させる?

遺言を書くときに、子どもの意見を聞いた方がいい?

私は、聞く必要はないと思います。

聞いて、悩んだり迷ったりするくらいなら、聞かない方がいいです。
自分の財産を誰にどう残すかは、本来、財産の持ち主の自由のはずから。

それに子どもは、通常、親の生前に、財産を「減らす」ことには貢献していますが
増やすことには貢献していませんから、あえて聞く理由もありません。

また、妻が2分の1、子が2分の1という法定相続分が、常に正しい訳ではないことも忘れずに。

法定相続分は
「亡くなった人の意思がない場合に」「法律が分け方の目安としている」取り分にすぎません。

相続は、各家庭に応じた正解があります。

たとえば普通の家庭なら、夫名義の財産は、名目上は夫が築いた財産であっても、
実質的には夫婦で一緒に築いた財産ですから、夫の遺産は妻にぜんぶ残すべき。

でも、代々続く地主や経営者の相続なら
財産はその「家系」や「会社」そのものですから、
不動産や自社株は、経営を引き継ぐ人に、なるべく多く残すべきでしょう。

遺言を書いた後、子どもに知らせた方がいい?

公正証書遺言の正本や謄本が自宅で見つからず
さらに、相続人が公証役場で遺言の有無を検索しなかった場合は、
死後、遺言が発見されず、遺言内容が実現しない可能性があります。

そのため、家族同士が円満なら、
作成した遺言を生前に家族全員に見せ、内容を知らせておいてもよいですが
実際には、円満ではないケースが多いので
遺言内容を知らせると、それがトラブルのもとになってしまいます。

私は、生前に子ども「全員」に
公正証書遺言を作った「事実」だけを、知らせることを勧めています。

備前焼は「十人十色」の私たちの人生と似ている

備前焼は、釉薬も使わず絵付けもされていませんが
非常に高温で焼き締められるため、窯詰めの場所により、色や模様などが違ってきます。

同じ土から作るものの、形作り、焼いた後は、人の手に渡り、使われながら徐々に経年変化し
この世にひとつとして同じものは存在しない。

そんな話を聞きながら、まるで人間の人生みたい、と感じていました。

生き方が十人十色なら、人生のしまい方も十人十色が当たり前。
世間一般の高齢者はこうだとか、法律の定めはこうだとかは、気にしすぎないことです。

ひとりごと

場所は銀座の並木ささ花さん。
季節の稚鮎も日本酒も、絶品でした。

カウンターで、私たちの横にいらした方は、
なんと偶然、彼女の渡米先の近くに住んでいるとのことで、大盛り上がり。

世界は狭い…?

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