週刊T&Aマスターの最新号には
相続税の申告業務をめぐる最近の訴訟トラブルが紹介されていました。
勤務税理士でも賠償額は所長と同じ
債務控除の適用ミス(米国籍を取得した相続人は「制限」納税義務者になる点に気づかず
債務を控除しすぎたミス)につき
実際に申告作業を行った勤務税理士に1,000万円の賠償が命じられています。
この金額は、なんと勤務していた税理士事務所の所長が負う賠償額と同額!だとのこと。
(平成27年2月5日付最高裁 上告棄却 判決確定)
通常は、税理士資格のない職員がミスをし顧客から訴えられても、賠償責任を負うのは所長だけ。
でも、単なるサラリーマンでも「税理士」と名乗っていたら、自分のミスの責任は自分が負うのです。
とはいえ、事務所のチェック体制がちゃんとしていないと、絶対にミスは発生します。
自分の年収以上の賠償金を払うなんて、普通の勤務税理士は考えていないと思います。
自社株評価の前に相続税対策の提案?
昨日、初めてご相談にいらしたお客様は、顧問税理士がいる方でした。
新たに担当になった税理士事務所の職員さんから
「御社は自社株だけで、相続税が○○○円もかかります。 対策しないと大変です!」と突然言われ
驚いて、セカンドオピニオンをもらおうと税理士を探したとのこと。
(所長にはめったに会えないので)
でも、私が伺ったところでは、自社株の正確な評価はまだで
(評価には時間がかかるので、これはざっくりイメージ金額だと言われたらしく)
その他の財産の評価も、過去に一切してもらったことがないそうです。
なぜそれで、相続税額が分かるのかはナゾですが・・・
「きちんとお持ちの財産をリストアップして、全ての財産の評価額を求めれば
相続税は試算できます。
それから遺言書や納税資金の準備をすれば大丈夫です。
顧問税理士さんに一度きちんと頼んでみて下さい。
私もご相談ならいつでもお受けしますので」と言うと、お客様は安心してお帰りになりました。
「税理士」の責任は重大
普通の税理士事務所では、相続税の知識がない職員が多いです。
おそらく受任件数が少ないため
職員が作成した相続税の申告書を、所内でダブルチェックする体制もないことが多いでしょう。
だからと言って中途半端なアドバイスをして
このT&Aマスターの記事のようなことになったら、大変です。
金融機関や不動産会社の方が、相続税対策の話をお客様に提案し、誤りがあったとしても
こういったリスクはないはずです。
だって、税理士ではないのですから。
税理士という資格の責任は重大です。