要件には注意。配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例

相続・遺言・遺産分割

相続税が大幅に安くなる特例といえば

【 配偶者の税額軽減 】
配偶者は、相続した財産額が1億6,000万円または法定相続分までは、相続税がかからない
【 小規模宅地等の特例 】
自宅の土地を、
配偶者又は同居親族(いない場合はマイホームを持たない別居親族)が相続すれば、
来年からは上限330㎡まで、土地の評価額が8割引

この2つです。

この2つの特例は、基礎控除額や生命保険金の非課税とは違い

要件1. 相続税の「申告書」を提出する
要件2. 相続税の申告期限までに、「遺産分割協議」が成立している



適用を受けるには、この2つが要件である点で共通しています。

要件1. 相続税の「申告書」を提出する

平成23年度の税制改正で、配偶者特例は当初申告要件が廃止されました。

一方、小規模特例には、当初申告要件が残っていますので、一般的には、配偶者特例の方がゆるく、
小規模特例の方が厳しいというイメージのようです。

とはいえ、条文上はどちらの規定も、期限内申告(申告期限までに出す申告書)に限らず、
期限申告(期限を過ぎてから出す申告書)や修正申告でも適用が受けられるので
遅れたり、間違えて申告したような場合でも大丈夫。

さらに、配偶者特例は、更正の請求(5年以内)でも適用が受けられます。

要件2. 相続税の申告期限までに、遺産分割協議が成立している

なので実際に、これらの特例を使えるか・使えないかは、 要件2が問題になります。

原則として、相続から10か月以内に財産分けの話し合いがまとまらないと、適用を受けられません。

では、その瞬間に即、配偶者特例と小規模特例の適用が受けられず、相続税額倍以上が確定!かというと、違います。

申告書(期限後でも修正でもOK!)申告期限後3年以内の分割見込書を添付して提出し、かつ
申告期限から3年以内に話し合いがまとまれば、適用を受けられます。

※ 申告期限後3年以内の分割見込書

この見込書↑を申告書と一緒に出すのを、絶対に忘れないこと!!

たとえば


10か月たっても遺産分割がまとまらず
・ 特例を使わずに、 期限申告書を提出した、または
・ 申告期限を過ぎてしまい、期限申告書を提出した

期限(又は期限や修正)申告書と一緒に、上記の「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出して下さい。

その後、当初の申告期限から3年以内に話し合いがまとまれば、どちらの場合も2つの特例を適用でき
それから4か月以内に「更正の請求」を行うと、多く納めた相続税を返してもらえます。

基礎控除額が4割下がる来年からは、結構こういった事例も増えそうですが
国税OBの著名な税理士さんが書いた、 税理士向けの本でも誤って解説されていたりするので、ドキドキします。

が、この本はオススメです。 私も、一部誤って理解していた点がありました。

一般の人に、2つの規定を説明するときは
「相続から10か月をすぎると、配偶者特例と小規模特例は使えません。
だから財産分けでもめないよう、遺言書を作りましょう
/又は、10か月以内に遺産分割協議がまとまるように努めましょう」と説明することが多いです。

でも、細かい点まできちんと押さえておいた方が、イザというとき安心ですね。

-相続・遺言・遺産分割

関連記事

妻と子が不仲なら「配偶者居住権」の活用も選択肢のひとつです

民法相続編が改正され 亡くなった方の配偶者が死ぬまで無償で自宅に住める「配偶者居住権」ができました。 2020年4月1日以後の相続からスタートします。 目次1 配偶者居住権1.1 改正のポイント1.2 …

相続税理士50選に載るか・載らないか?

今朝の新聞に「相続税理士50選」というものが掲載されていました。 ここに載るか載らないか。 税理士なら、どちらの選択肢も選べます。 どちらを選ぶかは、税理士ごとの働き方の違いであり、かつ、生き方の違い …

改正相続法を味方につける。自筆証書遺言がより手軽に・確実に

民法(の相続に関する規定)が、約40年ぶりに変わります。 そのうち、特に影響が大きいと思われる「自筆証書遺言」の改正点をまとめました。 目次1 今までは「公正証書遺言」が主流1.1 公正証書遺言とは? …

仮装隠ぺい・重加算税に注意 相続直前の現金引き出し

週刊T&Amaster NO.750(2018年8月6日号) 相続財産の仮想隠ぺいをめぐる最近の取消裁決事例 審判所、課税当局による重加算税を相次いで取り消す ●プロフィール ●個別カウンセリング

2024(令和6)年4月1日から相続登記が義務化されます

「相続登記」とは、相続した不動産の名義を変えること。 この相続登記が、2024(令和6)年4月1日から義務化されます。 目次1 相続登記とは2 相続登記が義務化された理由3 いつから?4 まとめ 相続 …