配当所得への所得税・住民税の課税方式
上場株式の配当金などの「配当所得」への所得税・住民税の課税方式は、①申告不要・②申告分離・③総合課税の3つがあり、どれを選択するかは自由に選べます。
また、所得税と住民税とで、別の方式を選ぶことも可能です。
通常は証券会社で「源泉徴収ありの特定口座」を選択していることが多く、所得税15.315%・住民税5%が自動的に配当から源泉徴収されるだけで済む①申告不要になっていますので、そのまま何もしなくて構いません。
あえて③総合課税を選びたい場合は確定申告が必要ですが、単に他の所得や控除があり確定申告をするだけなら、配当にかかる税金は既に天引き済みなので、配当を確定申告に含める必要はありません。
配当所得、申告する・しないの損得は
平均的な所得のサラリーマンや年金所得者の方は、所得税は③総合課税(確定申告をする)、住民税は①申告不要(源泉徴収だけで確定申告しない)を選ぶのが、一番税金が得になります。
確定申告をした場合の税率、つまり
所得税の総合課税の税率は、累進5~45%で、大半の方は15.315%より低くなり
住民税の総合課税の税率は、一律10%で、すべての方にとって5%より高く、損だからです。
とはいえ従来、この方法を取るのは手間でした。
制度上、所得税の確定申告書を税務署に提出すると、自動的に住民税の申告書を区役所などに提出したものとみなされて、住民税にも③総合課税が適用されてしまいます。
それを避け、住民税では①申告不要を選択したい場合は、別途、申告書や一定の書類を区役所などに提出する必要がありました。
所得税確定申告書第2表に記載欄が新設
しかし今回、令和3年分の確定申告からは、その必要がなくなります。
所得税確定申告書の第2表に以下の欄が新設され、所得税の確定申告書上で、住民税は①申告不要を選択する意思表示ができるようになったからです。
具体的には
確定申告書Aを使う方は、「○住民税に関する事項」の「特定配当等の全部の申告不要」欄に○を記入
確定申告書Bを使う方は、「〇住民税・事業税に関する事項」の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に〇を記入します。
それだけで住民税には①申告不要が適用されることになり、区役所などへの書類提出が不要になりました。
将来的には、所得税と住民税で別の課税方式を選べなくなる
ただ、令和4年度の税制改正により、2024年度分(令和6年度分)以後の住民税(=令和5年分の所得税)からは、所得税と住民税とで別の課税方式を選べなくなります。
なので、この住民税に関する記載欄も、間もなくなくなってしまうのかと。
また、上場株式の配当金などを確定申告するかしないかは、実は税金の損得だけでは判断できません。
確定申告をすることで、家族の扶養控除や配偶者控除、勤務先の家族手当の判定、国民健康保険の保険料などにも影響があるからです。
よく分からない、想定外の損はしたくないという方は、所得税・住民税どちらも①申告不要のまま確定申告しない方が安心かもしれません。
まとめ
以上、所得税の確定申告書に配当所得の住民税申告不要欄が新設されたことについて書きました。
そういえば以前、給与所得が億近い方から税務相談を受け、ご自身でされていた過去の確定申告で、配当を確定申告に含めて③総合課税(税率45%!)で申告していたのを見つけ、配当は申告しない方が得だとアドバイスしたところ、ものすごく感謝されたことがありました。
この方は、かなりの額の上場株式をお持ちでしたので、おそらく千万単位の所得税・住民税を、自発的に過大に支払っていたことに・・・