専門家の書く相続本はなぜ読みにくいのか

相続・遺言・遺産分割

FPさんが書いた、相続本のゲラチェックを終えました。

5/8の校正期限までに、ゲラを編集者さんに返送でき一安心。
読みやすくあったかい文章で、私の母世代の女性が読むのにピッタリの本でした。

今回のゲラがとても読みやすかったので
「相続や相続税に関しては、弁護士や税理士などの専門家【ではない】人が書いた本を読む方が
普通の人は理解しやすいのでは?」と、改めて感じました。

それがFPさんの存在意義かもしれません。

専門家の書く文章はなぜ読みにくいのか、その理由を考えました。

理由1 専門用語や厳格な解釈にとらわれすぎる

税理士以外は知らなくてもかまわない、細かい税金の決まりは多いです。

また、税務の判断は「条文→判例→立法趣旨」の順で考えるので
条文上OKだからといって、必ずOKだとは限りません。

そう考えれば、税理士が書く本や話すセミナー内容も
条文の厳格さにこだわりすぎる必要はないと、私は普段考えています。

個別の事案は、税務署か税理士に必ず事前に相談を!

なのに、いざ自分が人の文章をチェックすると、ついチェックマンになってしまいます(>_<)

たとえば、小規模宅地「等」の特例は、被相続人の自宅の土地が8割引になる特例です。
この「等」は、借地権などを含むという意味なので、省くことはできません。

また本当は、被相続人「等」の宅地が対象であり
この「等」も「生計一親族(たとえば子)」を表わしているため、省略してはダメなのです。

来年から上限面積が330㎡に拡大され、親と子の自宅を両方、8割引にできるケースも増えそうです。
8割引になるのが被相続人の自宅だけではないことは、税理士なら必須の知識です。
でも、普通の人にとっては、どうでもいいことでしょう。

その道に詳しい専門家が書けば書くほど、普通の人には難しすぎる文章になってしまいます。
オーバースペックは、おそらく求められていないのにもかかわらず・・・

理由2 読者が何について分からないかが分からない

自分のセミナーや本について、一般の方から質問を受けて初めて
「あ、そこから説明すべきだったのか」と気づくことがあります。

相続なら、相続税以前の話である民法について。

例えば、相続人の判定誤り、遺言書と遺産分割協議どちらが優先するか、
相続・遺贈・死因贈与の違い、法定相続分と遺留分の違い、などです。

普通の人の目線に立ち、できるだけやさしく説明しているつもりでも、やはり専門家はズレています。

そのことに気づきにくいため、自分の話や文章のどこが相手に分かりにくいのかさえ
そもそも分かっていないのです。

理由3 宣伝や顧客獲得が目的になりがち

ある金融機関の方が「顧客を獲得するには、セミナーや無料相談に来た客に解決策を述べてはダメ。
トラブル事例を紹介し、問題点を専門用語をちりばめて指摘するに留めれば、
あとで『あのときの話の続きを教えて。うちはこういう状況なんだけど』と、案件の受注につながる」とおっしゃっていました。

私はその意見には反対で
セミナーや個別相談では、限られた時間でめいっぱい知っていることを話し、話を聞きます。

それで解決できるなら、それに越したことはありません。
同じく本を書く目的も、「実際に」読者の役に立つためです。

最近は、自分の宣伝や顧客の獲得を目的とする本が増えています。

特に相続税に関しては、税理士本人ではなくライターが書いた本も多く出版されており、
それに批判的な意見も多いです。

でも私は、税理士が書くと難しくなる話を、書き読みやすくするためにライターを使うなら
それはありだと思っています。

※ただし、ライターに書かせ、かつ、宣伝や顧客獲得だけが目的という本は
肝心なこと(じゃあどうしたらいいのか)をあえて書かず、分かりにくい本になっているので、論外です。
また、私自身は絶対ライター本は出しません。

専門家の専門知識は、せっかくなら顧客のために生かしたいもの。

読みやすい本を作るサポートをすることも、そのひとつです。

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